私たちめいめいは、皆それぞれ人生の畑に蒔くべき種子を持っていながら、自分の持っている種子から、どんな植物が生えるのか、知る力を与えられてはいないのです。種を蒔く時節が来たら、ここかそこかと、よさそうな地面を捜して、心して植え、骨折って培養して、花が咲き実がなってみなければ、どういう花が咲くということも実がなるということも分からないのでございます。
こういう風になりたいと思って働いているのだけれど、果たしてそうなるだろうか、どうだろうかというような、疑い深いいじけた心持でなく、すべての結果を神に任せて、賢く、しかし最も無邪気に、日日の労作をつづけ得る人は、最も大いなる幸運児です。

羽仁もと子著作集　思想しつつ生活しつつ（上）「運の好い人悪い人」