各自の家計は、その一面において公の性質をおびているものですから、主人がその収入を家人に公にしなかったり、徹頭徹尾主婦のこころ一つで家内(かない)の切り盛りをするようなのはよくないと思います。幼児でないかぎり、家中の子供も老人(としより)も、家計の大体に参与すべきだと思います。そうしてそれが、気持ちよく各自の家計をととのえていくための、第一の基礎になるばかりでなく、家人ひとりびとりに経済的の考え方を養い経済上の訓練をほどこすことになり、したがって国民のひとりびとりが経済思想をもち、確かな経済的な立場をもつことになるわけです。
羽仁もと子著作集 第9巻「家事家計篇」より 「豊かな心で」